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Index考察など
小説版「−見て、歩き、よろこぶ者−」が目指したもの


 ■ 小説版
  『ヨコハマ買い出し紀行』
       が 目指したもの

小説版『ヨコハマ買い出し紀行 見て、歩き、よろこぶ者

執筆 2008年 10月24日  更新 2025年 05月19日 



(以下 ネタバレがありますので、
読む方は ご注意ください)




発売から 数日がたち、
ネット上の個人サイトでも、
『小説版』の 感想 が散見されるように
なってきたのですが…

やはり、昔から読んでいるファンほど
否定的な 感想 が 多いようです。



批判箇所は おおむね、
「登場人物が少ない」
「すでに漫画で読んだ内容を
くりかえしているだけ」

というもので、

漫画本編を全て読んでいる者にとっては
『なぜ 今さら?』という思いを抱きがちな
内容であることは確かです。



ココネ の 待つカフェアルファに帰宅した
アルファさんの笑顔」

美しく幕を下ろした最終話が、
まだまだファンの記憶に新しいので、

もう「パラレルワールド」と
割り切って読むべし!

との極論(感想)も見られます。
(部分的には うなずけます(苦笑))



昔からのファンの間で
『事実上、公式』と 言わしめるまで
浸透していた設定解釈を、
(もちろん、本当の公式設定ではなく
ファンの多数が「大方 間違いないだろう」と
認識している「解釈」の事です)


1人の小説家さんの視点で
「NO」を突きつけたわけですから
(ただし、単なる個人の解釈ではなく、
芦奈野先生の監修が入っている可能性はありますが)


結果的に 彼らを敵に回す 可能性は
否めない内容と思います。




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ただ正直 僕自身は、

こうした古参のファンの方々
ほどの 嫌悪感(?)は、
この小説版には 抱いておらず、

むしろ、ほのかな 好感 すら
感じています。


それは なぜなのか? を、
以下に お話ししてみますね(^^



僕が当小説から感じた好印象の1つに、
『漫画版以上に現実味を増して
整合性がとられた人物たち』

があります。


一方で 原作漫画は 連載 であるため、
当然 そこには、
読者の興味を維持させるための工夫
(連載を継続するための工夫)

が 内在した「はず」です。


それは 例えば、
アフタヌーン読者の中核である
20〜30代男性
が 喜びそうな
色々なタイプの 愛らしい少女
ココネ・マッキなど)かもしれません。



いや、彼女たちが読者を釣るエサ(!)
であったかどうかは、
この際 どうでもいい のです。


重要なのは、

プロである以上、作者にとっては不本意な
『連載維持のための 追加ファクター』も
大なり小なり要求される 現実


そして、それによって生まれる
結果的な 不整合性 です。



それを前提に、ここで
大胆に「仮説」を立ててみます。

以下は、
全く個人的な 仮説
であることを念頭に、
お読みいただきたいと思います。




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思うのですが 香月さんは、
この小説版において、

『1クリエイターとして、
作品内の不整合の修正
挑戦してみたかった』

のではないでしょうか?



「ヨコハマ買い出し紀行」は
すでに連載が終了しているため、

作者である芦奈野先生から
提供された「作中情報」は、
ある意味「全て」
僕ら読者も持ち合わせています。




そして、「ヨコハマ〜」
丁寧に練られた作品ではありますが、

作品内の楽園性 を 維持するために
色々な 不整合(矛盾)を
あえてサラリと描いている
ことも、
(香月さんを含む)我々 読者は知っています。

(たとえば、人も まばらになった三浦半島の、
さらにヘンピと思われる 初瀬野邸の近辺で、
いまだに インフラが維持されている 点とか…)




では、小説版 は どうか?


1発販売ですから
連載 は 気にしなくてもイイ ので、
ある程度 冒険ができる


すでに漫画連載が
キッチリと終了しているので、
小説で使った設定が
「今後の連載」に影響(不整合)を
及ぼすことも無い



しかも 書き手に、
クリエイターとしての気骨
あったとしたら…



原作者の用意してくれた
情報と フィールドで、
存分に胸を借りつつ、
自分の力量を試したい!

と 考えるのは、
無理のない話ではないでしょうか?




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香月さんが
その時 目指したのは おそらく、

『原作以上に整合性の取れた
心理描写』
による、
コミックス 全14巻の再現


そして、それを成すために
必要最小限にしぼった登場人物は、
アルファ・タカヒロ・おじさん・
子海石先生・ミサゴ・初瀬野先生
でした。



それは 奇しくも、
第1巻の前半 からの 主要登場人物

芦奈野先生ご自身が
「これだけのキャラがいれば、
現時点での自分の言いたいことは描ける」

と 想定して歩き始めた(と思われる)
キャラクタだけで構成されているのです。



この6人の心情を深く掘りこむことだけに
注力した物語づくりは、

イコール、初期の芦奈野先生が目指しつつも
連載漫画家として断念せざるを得なかった
理想(本意)の具現化
であり、

これ以上は無いほどの
クリエイターとしての 真っ向勝負
と 言えるのです。



あるいは、これこそが正に
芦奈野先生の 監修 なのでは
ないでしょうか?

「僕が当初 本当に描きたかったのは、
この6人だけなんですよ。
だから、彼らの心情のみを丁寧に掘り込んだ
小説版独自の物語、期待していますよ」

との依頼が
香月さんに託されたのだとしたら…


僕らは、この 小説版 によって、
ついに 作者 芦奈野ひとし先生が
本来 目指した「ヨコハマ買い出し紀行」

辿り着いたのだと言えます。



それは 連載終了 2年 をもって、
作品への客観性が増した(読者・作者とも)
今だからこそ成し得た
『始まりのための 決着』


生まれ故郷 ハママツ を 離れることで、
眠るアルファさんの記憶から
過去の真実 を 知ったオメガのように…

漫画版を離れた当作品によって、
芦奈野先生の かつて目指した真実 を、
僕らは目の当たりにしたのかもしれません。




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…というのが、僕の 仮説 です。


僕自身が
「原作の(意図的に)空いたピースを
考察して埋める行為」

大好きな所があるので、

香月さんの物作りに
必要以上に 感情移入 し、
多大に 美化 が入っていることも
自覚しつつ(笑)書かせていただきました。



でも、このような視点で
あらためて小説版を読み直してみると、

合点が行く というか
「こういう形も アリかもなぁ」という思いが、
今まで以上にシックリと
胸に収まるような気がします。



「小説」というメディアを通じた、
長寿漫画への 挑戦 と 尊敬


その結果が この、
『−見て、歩き、よろこぶ者−』
だったのではないでしょうか?



『Aタイプの歴史』を 創作することで
芦奈野先生に(一方的に)胸を借りた自分は、

この小説と その作者に、
好意 と 親近感 を 抱かずには
いられないのです…(^^




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 2025年 5月19日 追記


実に 17年 の時を経て、
このページをスマホでも見やすいよう書き直し、
この文章を書いています。



2008年当時は まだまだ新参者で
(サイトを開設して ようやく2年が経過した所でした)
ネットの海に埋もれがちな
うちのサイト・ページ
だったため、

この 小説版 感想ページ
ネットの海に埋もれて
ほとんど誰の目にも ふれていないものとばかり
思い込んでいたのですが…


先日 Twitter(X)で
他人さんの投稿を読んでいた所、
「ヨコハマ買い出し紀行の小説について
ネット検索すると、うちのページが
かなり上位に来る
ことが判明…


これはさすがに 昔のまま
(CSS未対応・レイアウトも崩れる)では
マズいだろう…
と、

大あわてで1週間を費やし、
小説関連のページを整備した次第です。




当時「ファンアイテムとして
持っておいた方がいいですよ?
すぐに値が上がるだろうし…」

と 書いていた自分ですが、

悪い意味で予測が当り、

2025年現在、
小説版は 異様に高騰 していて、

メルカリ5000 〜 6000円 ほど…

駿河屋Amazon では、品切れか
2万 3万 といった狂った価格で
売られており、

とても気軽に勧められる書籍では
無くなってしまいました…
(泣)



小説版 は たしかに「1つの結論」として
興味深い作品ですが、
それは 900円前後という
当時の値段だから言えることで、

5000円以上や 万単位の お金を払う価値が
十分にあるか?
と 問われれば
さすがに僕も うなずけません。


本当に お金に余裕があり、
ヨコハマアイテムなら全部そろえておきたい!
というヘビーユーザー
以外には
お勧めできないというのが、
現時点での正直なところでしょうか?
(決して悪い作品ではないのですが…)




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